● 和解に効力無し ●
 松本零士・西崎義展両氏の和解アナウンスから10日も経たない2003年8月6日、東北新社は両氏の和解に対する見解を出しました。 
 その内容は両氏間での和解内容に対して、「貴方たちにはそもそも宇宙戦艦ヤマトの著作権は無いから、和解はなんの効力もありません。」とするものでした。
 両氏の争いの本質は、宇宙戦艦ヤマトを誰が創造的に作ったか・・・著作者人格権の確認訴訟であったのは事実で、和解内容は著作者人格権とは区別できる著作権の権利まで踏み込んでおり、著作権保持者の東北新社がこの見解を出すのも当然といえますし、見解内容も筋が通っています。
 
 正直、東北新社は正しい事を言っています。ただ問題は、今までの対応と、見解を出したタイミングでした。
 
 両氏の和解内容は事実上、西崎義展氏の許可がないと、宇宙戦艦ヤマトの関連新作は作れないとするものでした。仮に西崎氏サイドが和解をうけて新作製作を始めた場合、東北新社は勝手に自社の権利を使用されてしまい不利益になってしまいます。当然法的対処をする事でしょう。
 でもこれは仮定の話しです。事実は違いました。
 
 東北新社は過去において、自社と社員及び、株主の利益につながる大切な財産が侵害されていたときに、なんらかの法的な処置をとったような形跡が見当たりません。少なくとも私達には伝えられていないようです。
 松本零士氏とベンチャーソフト社は、数年間に渡り“表面上”東北新社ぬきの新作製作を続けました。その間、東北新社は水面下で「松本先生、勝手に作っては困りますよ。」とでも言っていたのでしょうか?
 松本零士氏と新作の協力関係にあったのは事実でしょうが、松本零士氏と第三者である企業が作る作品に許可を与えていたという情報は、何処からも出て来ていません。東北新社は、著作権侵害を傍観していたと思われても仕方が無いでしょう。
 コピーライトの表記、DVDの原作追加といい、東北新社はもっと身のうちをしっかり固めるべきでした。
 
 また、今までおおっぴらにしてきたコピーライト表記や、原作者表記を次々と本来あるべき姿に訂正しましたが、では何故訂正したのか?東北新社からはその理由が聞かれません。理由を示さないのは、訂正以前の著作権表示が何故あのようになったかのかを表ざたにすると、なにか不都合があるからでしょうか?
 まるで“ホワイトハウスの陰謀”のようなミステリーです。
 
 こうした東北新社の企業倫理を問題視されるような行動は、自社の不利益になるだけではなく、ファンの批判を買う事をしっかりと認識すべきです。
 東北新社には、宇宙戦艦ヤマトの著作権保持者として、しっかりとした対応を希望します。
 
 余談ですが、自民党をぶっ壊すと言った改革者・小泉首相の政府は、日本国の財産としてのコンテンツ産業を発展させていく為、色々と政策を打ち出しています。
 文化庁の「MAP=文化庁メディア芸術プラザ」http://plaza.bunka.go.jp/lでは、西崎・松本両氏の裁判の事にも触れています。非常に中立的な立場で、多分私達と同じ世代の方が原稿をあげたのでしょう。
 こうした政府の後押しもありますので、著作権保持企業には、慎重な対応を願うものです。

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「宇宙戦艦ヤマト」の
著作権者・原作者は誰か?

H14. 3.25 東京地裁 平成11(ワ)20820等 著作権 民事訴訟事件
として争われた民事訴訟。

西崎義展氏がアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の著作者人格権を侵害し、松本零士氏の名誉も傷つけたとして、松本氏が訴えた。
これに対して西崎氏は、自身が「宇宙戦艦ヤマト」の著作者であることの確認を求めて反訴した。

裁判の大きな争点としては、「宇宙戦艦ヤマト」を創作したのは誰か?と、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の大元となる『原作』は存在するか?があり、1審判決では西崎義展氏の主張が認められた。
名誉棄損に関しても、松本零士氏には「名誉毀損となる理由が存在しない」と退けられた。